テーマ103 管理職者として部下の言動を変えていく
〜リーダーシップの経営理論から学ぶ管理職者の実務〜
■リーダーシップの定義と管理職者の仕事
リーダーシップ論の第一人者であるニューヨーク州立大学
ビンガム校の心理学者バーナード・バス氏によれば
リーダーシップは、下記のように定義されております。
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リーダーシップとは、状況あるいはメンバーの
認識・期待の構成・再構成がしばしば行われる
(二人以上のメンバーから成る)グループにおける、
メンバー間の相互作用のことである。
この場合リーダーとは「変化」を与える人、
すなわち他者に対して(その他者がリーダーに影響を与える以上に)、
影響を与える人のことを指す。
グループ内のある人が他メンバーの
モチベーション・能力を修正する時、
それをリーダーシップという。
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実務的には、部下を育成するための目標とその期間を決めて、
部下の仕事をする能力やモチベーションを変え、
言動を変えていくのが、管理職の仕事といえます。
■最新のリーダーシップ論の概要
1.トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)
トランスフォーメーショナル・リーダーシップ(TFL)は、
ニューヨーク州立大学ビンガム校バーナード・バス氏が
1980年代に提唱し、今も世界のリーダーシップ研究の
中心的理論となっているものです。
概要は、下記のようなことです。
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明確にビジョンを掲げて自社・自組織の仕事の魅力を部下に伝え、
部下を啓蒙し、新しいことを奨励し、
部下の学習や成長を重視するリーダーシップ。
下記の3つの特質がある。
・企業・組織のビジョン・ミッションを明確に掲げ、それが
「いかに魅力的で」「部下のビジョンにかなっているか」を
部下に伝え、部下にその組織で働く
プライド、忠誠心、敬意を植え付ける。
・部下が新しい視点で考えることを奨励し、
部下にその意味や問題解決策を深く考えさせてから
行動させることで、部下の好奇心を刺激する。
・部下に対してコーチングや教育を行い、
部下一人ひとりと個別に向き合い、学習による成長を重視する。
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2.シェアード・リーダーシップ(SL)
クレアモント大学 クレイグ・ピアース氏が
2000年代に提唱したもので、
「知識ビジネス産業においてきわめて重要」とのことで、
近年の世界のリーダーシップ研究で、多大な注目を集めております。
概要は、下記のようなことです。
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従来のリーダーシップ理論は「特定の一人がリーダーシップを執る」
ことが前提であったのに対し、
SLは「グループの複数の人間、時には全員がリーダーシップを執る」
と考える。
「シェアード・リーダーシップ(SL)」は、
「リーダー→部下」という「垂直的な関係」ではなく、
それぞれのメンバーが時にリーダーのように振る舞って、
他のメンバーに影響を与え合うという
「水平関係」のリーダーシップである。
知識ビジネス産業など、複雑なタスクを遂行するチームにおいては、
垂直的なリーダーシップよりも
「水平関係」のリーダーシップの方がチーム成果を高めやい。
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■最新のリーダーシップ論を踏まえた管理職者の実務
まず、管理職者とは、仕事やモチベーションに変化を与える存在で、
組織内では絶対必要な存在であることを再認識することが必要です。
実務的には、目標とその達成期限を決めて、
達成期限内に部下の言動を変えていくことが、
管理職者の仕事となります。
実務的な留意事項を下記に示します。ご確認下さい。
・「部下の仕事」と「部下のやる気」をつくりだすこと。
・権限による強制ではなく、部下一人ひとりの行動を導き出すこと。
・部署の状況や一人ひとりの部下の状況に応じた
リーダーシップを発揮すること。
・担当部署の目標、目標達成のための行動計画を
部署内のメンバーに明確に示し、その必要性を説明し、
賛同を得て、実行してもらうこと。
・部下一人ひとりの期間を定めた育成プランを
部下とシェアしながら作成し、
部下一人ひとりに目標、ビジョンを明確に持ってもらうこと。
・部下一人ひとりと向き合い、意識的、計画的に
コミュニケーションを取ること。
・部下の仕事の日々の進捗管理において、
その仕事の過程や結果を認めること、ほめることを繰り返すこと。
このことにより部下の心の中に変化を起こし、
この小さな変化の積み重ねにより部下のやる気を醸成すること。
・指導育成により、目標期間内に部下の言動を変えること。
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